【スポーツ】我慢は時に、パフォーマンスを下げてしまうかもしれません。
何かの目標を達成するためには、何かを我慢しなければなりません。
これはスポーツにおいても同じだと考えられます。
理想に肉体を手に入れるため、高いパフォーマンスを発揮するため、目的は人それぞれですが、大きな結果を得るためには「我慢」がつきものです。
しかしその「我慢」は、続けすぎると逆にあなたのパフォーマンスを下げてしまうかもしれません。
今回は、その「我慢」についてフロリダ州立大学の社会心理学部の教授であるロイ・バウマイスター氏らが行った実験をご紹介します。
実験内容
空腹の学生を被験者として集め、2つのグループに分けます。2つのグループを甘いクッキーの香りが漂う部屋に入ってもらい以下の行為を行ってもらいます。
グループA
部屋の中にある、チョコレートとラディッシュ(二十日大根)が置かれたテーブルの中から、チョコレートを3個食べてよいと伝える。
つまり、誘惑に逆らわず食べたいものを食べることができる。
グループB
部屋の中にある、チョコレートとラディッシュが置かれたテーブルの中から、ラディッシュを3個食べるように伝える。
つまり、チョコレートを食べたいという誘惑に逆らい、ラディッシュを食べることで被験者に我慢をさせる。
上記の行動をとってもらった後、2つのグループを別の部屋に移動させ、あらかじめ解くことができないように設定しておいた図形パズルに挑戦してもらい、ギブアップするまでの時間を計測しました。
実験結果
チョコレートを食べることができたグループAは、平均して約20分間パズルに取り組むことができたそうです。
対して、チョコレートを我慢してラディッシュを食べたグループBはものの平均して約8分でギブアップしてしまいました。また、その後のアンケートで強い疲労感も見られたそうです。
考察
今回の実験結果から、我慢を続けすぎると逆に我慢することが難しくなっていくと考えられます。
私たちは常に「意志力(ウィルパワー)」を使いながら生活しています。この意志力は体力と同じく限界があり、物事を我慢したり、物事の選択や発言など日常のいたるところで意志力は消耗していきます。
意志力が消耗すると、思考能力が弱まり、誘惑に負けやすくなったり、判断を誤ったりするようになります。今回の実験でも、チョコレートを我慢するという行為は意志力をかなり消耗させるため、その後のパズルに長い時間取り組むことができなかったと考えられます。
意志力は睡眠によって回復しますが使いすぎると回復しきらないこともあります。つまり、自分にストイックに我慢を続けすぎていると、意志力の消耗が早くなり、睡眠のみでは回復が間に合わなく、逆に誘惑に弱くなってしまうということが言えるでしょう。
意志力を維持するには
では最後に、今回のテーマとなった「意志力(ウィルパワー)」を素早く回復させる方法や、長い時間持続させる方法をすこしご紹介します。
1. 十分な睡眠をとる
これは考察でも書きましたが、意志力を回復させる一番の方法は睡眠です。回復に必要な時間は人によって異なりますが、睡眠には「何時間寝たか」よりも「何時に寝たか」が重要だと言われています。22時から深夜2時までは、成長ホルモンが盛んに分泌されます。成長ホルモンは年齢に関係なく分泌され、脳の疲労回復や壊れた神経細胞を修復するため、ウィルパワーを回復させることに有効だた考えられます。
2. 12時間に一度、適度にブドウ糖を摂取する
これもよく聞く話だと思われますが、脳を動かす6種の栄養素、ブドウ糖、脂肪酸、リン酸、アミノ酸、ビタミン、ミネラルのうち、脳を動かすエネルギー源として活用できる栄養素はブドウ糖しかないと言われています。今回紹介した実験においても、チョコレートを食べたことが結果が大きく分かれた一つの要素なのかもしれません。
脳は毎時5グラムのブドウ糖を消費すると言われています。それに対し肝臓に備蓄できるグリコーゲンは60グラムが限界と言われており、最長でも12時間程度しか脳にブドウ糖を供給することができないと考えられます。
3. 目に疲労を蓄積しない
「目は心の鏡」と言われているように、目の動きにはその人の思考や心理状態が現れます。脳と器官が脳神経によって直結されている器官は目のみです。脳が処理している情報のうち8割は視覚を通じて処理されていると言われています。スポーツにおいて、特に球技では目が命です。目の疲労は蓄積すればするほど集中を妨げ、ウィルパワーの消耗が激しくなると言われています。マッサージなど目のケアを心がけることが、ウィルパワーの消費を軽減すると考えられます。
今回の参考書籍
池田貴将(2017)『図解モチベーション大百科』
メンタリストDaiGo(2016)『自分を操る超集中力』
今回の参考サイト
リクナビNEXTジャーナル「意志力を、鍛えよ!今気になるビジネス書の要約」