【スポーツ】共通の目標を作ることは、他の何よりもチームワークを深めるそうです。
スポーツチームや団体において、世代交代や新年度といった節目に、多くのチームは来年度の目標や次の目標を立てるでしょう。実はその「チームで共通の目標を作る」という行動は、侮ってはいけないほどチームにとって大きな影響をもたらしています。
今回ご紹介する研究は、社会心理学者ムザファー・シェリフ氏らが1961年に行った実験で、「泥棒洞窟実験」と言われています。
実験内容
11歳~12歳の少年22名を被験者として集め、AとBの2つのチームに分け以下の①から③の行動を順にとってもらいました。
①チーム内での仲間意識を高める
最初はお互いのチームの存在を知らせずにチームA、チームBそれぞれで共同活動を行い、チーム内での仲間の意識を高めました。
⇓
②互いの存在を伝え、スポーツ対決を行う。
1週間後に、両チームにお互いの存在を伝えました。
その後、別のチームがいることを意識し敵対心を燃やしているチームA、チームBの両チームを遭遇させ、賞金を懸けたスポーツ対決に臨んでもらいまうと、両チームは互いにさらに敵対意識が強まり、対決内に収まらず対決外でも対立が発生してしまいました。
⇓
③対立を解消するために、両チーム合同で2つの行動をとってもらう。
スポーツ大会で発生してしまった対立を解消するために両チームに2種類の行動を共にしてもらいました。
(1)映画や食事などを共にし、チーム同士の交流の機会を増加させた。
(2)両チームがともに協力しなければ達成できない課題を与えた。
以上の行動をとってもらい③の(1)と(2)どちらの行動が、チームの対立に効果があったのか記録しました。
実験結果
③の(1)の行動で両チームの交流を深めた場合、チーム間の対立が解消されるどころかより敵対意識が高まってしまった。
一方で(2)の行動で、両チームが協力しなければ達成できない課題を与えたところ、徐々に敵対意識が解消され、相手への好意へと変わっていった。
考察
今回紹介した実験結果から、一緒に楽しいことや娯楽を共にするよりも、協力して何かに取り組む環境が与えられた方が、お互いに良い人間関係が形成できると考えられます。
今回の実験ではチーム内で共同生活を行って仲間意識を形成してから本題の内容に移っていましたが、1週間程度で仲間意識を形成できていることから、楽しい事や娯楽の域を超え、共同生活まで行うと互いに仲間意識を形成できると考えられます。
また、対立を解消する結果となった実験内容③の(2)では、課題を与え実際に行動することで協力をしたことから、目標を設定する場合は、何をどのように取り組みその目標を達成するのか具体的である必要があると考えられます。
まとめ
今回はチーム同士の対立でしたが、これはチーム内でも十分に活用できる知識であると考えます。必ずしも皆が同じ考えを持っているわけではありません。団体が大きくなるにつれ、馬が合わないチームメイトも増えるでしょう。
そういったときには、無理に一緒にご飯や遊びに誘ったりせずに、共通の目標をチーム内でしっかり一つ確立させておくことが大切だと考えます。
そのシー無所属しているということは、そのスポーツが好きで、高みを目指すためにそのチームに入ったと認識し、馬が合わなくても見ている方向が同じならば、それはチームにとって大きな障害になることはないと考えます。
また、設定する目標はどのようにして目標を達成するのか可能な限り具体的に細かく設定を行うことで、その効果はさらに強いものとなるでしょう。そしてその目標を高須設定することで、「協力せざるを得ない状況」を作り出すことができ、さらに良いチームワークが形成されると考えられます。
今回の参考書籍
亀田達也(2019)『眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学』
山岸俊夫(2001)『社会心理学キーワード』
池田貴将(2017)『図解モチベーション大百科』
【スポーツ】キャプテンの座は、心理戦略で勝ちとりましょう。
チームやその団体を仕切るリーダーや代表は、責任が重く苦労の多い役職です。しかし、それ相応の達成感や充実感があり、代表という立場で培う経験は必ずその人の人生の財産になります。
今回はそのリーダー、キャプテン、代表といったチームの上に立つ役職の座を勝ち取りたい、今所属しているチームを変えるためにキャプテンになりたい、などという方に知っておくと便利な知識をご紹介します。
この実験は、カリフォルニア大学バークレー校のキャメロン・アンダーソン氏とギャビン・キルダフ氏が行った、発言とリーダーシップについての実験です。
実験内容
お互い面識のない学生を被験者として集め4人それぞれのチームで10組作り、さらにそのグループをチームAとチームBの二つに分けます。その後以下の行動をとってもらいました。
チームA:それぞれのチーム内でリーダーを決めてから数学の問題を解いてもらう。この時Aチームン取り組む様子は録画されている
チームB:チームAのそれぞれのグループワークの録画を見て、各グループで誰がリーダーにふさわしいかを選んでもらう。
上記行動をとってもらい、自分たちでリーダーを決めたチームAの各グループのリーダーとなった人物と、チームBで選ばれたチームAの各グループのリーダーとなった人物を記録します。
実験結果
チームAとチームBで選ばれたリーダーは、それぞれグループでほぼ同じ人物が選ばれました。
リーダーに選ばれた人物の共通点は、「最初に発言をした」という行動でした。また、選ばれた人物は平均しても、決して数学のスキルが高かったわけではありませんでした。
さらに、チームAの各グループで導いた回答のほとんどは、選ばれたリーダーが提案した回答でした。
考察
今回の実験からリーダーや代表になるには、その分野の専門スキルなどではなく、「いかに最初に発言をするか」で決まってくると考えられます。また、リーダーの発言、意見は非常に影響力があり、その発言や意見はリーダーではない人物の発言や意見に比べ通りやすいということも考えられます。
しかし、実はこの実験で扱われた数学の問題はそこまで難解な問題ではなかったため、いくら最初に発言したものがリーダーにっらばれやすいといえど、その分野に対して全くの無知な状態はかえってチーム内の信頼を失ってしまうのではないかと考えます。
まとめ
もっとチームを変えたい、チームメイトにもっと高い意識を持ってもらいたいと思うなら、キャプテンや代表を目指すべきです。そしてそのリーダーになるには、どんなに面識のない相手でも、とにかく「最初に発言」をすることです。
よく、リーダーに必要な要素はと言われますが、「最初に発言をする」という勇気ある行動こそ、リーダー必要な要素なのではないかと私は考えます。
今回の参考書籍
池田貴将(2017)『図解モチベーション大百科』
【スポーツ】緑茶を飲むと持久力が向上します。
今週のお題「好きなお茶」
スポーツでの水分補給でお茶を好んで飲む方は少なくないと思います。今回はそのお茶のなかでも「緑茶」に焦点を当てて、いくつかの実験からスポーツに役立つかもしれない知識をお伝えします。
緑茶の主な成分
緑茶に含まれている主な成分を簡単に紹介します。
・カテキン
お茶の渋みの原因となっている成分でポリフェノールの一種です。緑茶には8種類のカテキン化合物が含まれています。カテキンには細部の老化を防ぐ抗酸化作用、抗ウイルス作用など様々な効果が確認されています。緑茶の成分の約20%ほどを占めています。
・テアニン
お茶のうまみに関与しているアミノ酸の一種です。興奮を鎮め緊張を和らげる働きを持っています。また最近では、睡眠改善効果が確認されています。
・カフェイン
コーヒーなどに含まれており、かなり認知度が広く知られている化合物です。脳の覚醒作用を促しますが緑茶にはエナジードリンクほどの量は含まれていません。利尿作用、解熱鎮痛作用などほかにも様々な効果があります。
「カテキン」についての実験
上記で3つの主な成分をご紹介しましたが、中でも「カテキン」は最近注目を集めており、スポーツの持久力に良い影響を与える可能性があると事が最近の研究で明らかになってきています。今回はそのカテキンについての実験を3つほどご紹介します
実験1
実験内容
早稲田大学スポーツ科学学術院の宮下政司教授らが行った研究です。
トレーニング習慣のある学生27名を被験者として集め2つのグループに分けます。片方のグループには高濃度のカテキンが含まれた飲料(茶カテキン639mg/500mL)、もう片方のグループにはカテキンが全く入っていない飲料(茶カテキン0mg/500mL)を、2週間継続して飲用してもらい、Yo-Yoテストというシャトルランに似た持久力テストを行ってもらいました。
実験結果
Yo-Yoテストを行った結果、高濃度のカテキンが含まれた飲料を飲んだグループの総走行距離がもう一方のグループよりも有意に延長されることが認められました。
実験2
実験内容
同じく早稲田大学スポーツ科学学術院の宮下政司教授らが行った研究です。
陸上競技者で中・長距離男子競技者15名を被験者として集め、1つ目の実験同様、高濃度のカテキンが含まれた飲料(茶カテキン639mg/500mL)、もう片方のグループにはカテキンが全く入っていない飲料(茶カテキン0mg/500mL)を、2週間継続して飲用してもらい、3000mのタイムトライアルに挑戦してもらいました。
実験結果
3000mタイムトライアルにおいて、高濃度のカテキンが含まれていた飲料を飲用していたグループの方が優位に速いタイムを記録しました。
実験1.2の図説
実験3
実験内容
2018年J Physiol Sciに掲載された研究です。
健康な男性8名を被験者として集め、室温35℃湿度75%と厳しい暑熱環境で、茶カテキンを多く含む飲料、イオン飲料、ミネラルウォーターのいずれかを飲用して90分間安静に過ごしてもらいまし、体温の変化を記録しました。
実験結果
どの飲料を飲用した場合でも体温の上昇は見られたものの、茶カテキンを多く含む飲料を飲用した場合にのみ、発汗速度と血流の増加、深部体温の上昇抑制が認められました。
実験3の図説
考察
それぞれの実験結果からカテキンの飲用は、持久力を向上させる子脳性があると考えられます。また、暑熱環境において深部体温の調節に影響しており、体温の上昇を抑える働きがあると考えられます。
緑茶を飲用するにあたって
上述の通り緑茶にはカフェインが含まれています。脱水症状時などに水分補給を目的として緑茶を飲用する場合はカフェインによる利尿作用により必要な水分を排出してしまうため、試合中や練習中の緑茶の飲用はあまり適していないと考えられます。
実験内容の通り、被験者たちは2週間継続的な飲用によって効果を発揮しました。したがって長期にわたる飲用によって効果を発揮するものであり、短期の集中的な飲用ではお効果は見込めないのではないかと考えれられます。
また、カフェインが含まれているため大量に引用しすぎると、睡眠の質の低下や倦怠感といった症状が出てしまう可能性があるため、あまり得策とは言えません。
適度な量を継続手して飲用することがカテキンの効果を最大に引き出すと考えられます。
参考サイト
日本薬学会 環境・衛生部会 平田祐介「分子レベルで解き明かされる緑茶(日本茶)の効能」
http://bukai.pharm.or.jp/bukai_kanei/topics/topics55.html
https://www.waseda.jp/fsps/gsps/news/2017/03/14/1637/
参考文献
Nishimura R, Nishimura N, Iwase S, Takeshita M, Katashima M, Katsuragi Y, Sato M.(2018)『Effects of catechin-enriched ion beverage intake on thermoregulatory function in a hot environment.』
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29687331/
【スポーツ】「体を冷やすな」という考えはもう古いのかもしれません。
過度な試合や練習で酷使した箇所や、捻挫や肉離れなどけがをしたときには、アイシングでアフターケアを行います。ですが、最近の研究ではこの「アイシング」つまり身体冷却は試合や練習後だけでなく、特に環境温度が高い場合には試合前や試合中に行うという考え方が一般的になりつつあります。
体温上昇とパフォーマンス
スポーツの成績は、体温の上昇に大きく影響されると言われています。特に持久性の運動を行った場合運動中の深部体温がや40℃程度に達すると運動が不可能な状態に陥ります。
深部体温約40℃というのは、運動を継続する体温の危機的限界レベルとされており、これに達する、あるいは上回るような過度な体温の上昇は呼吸循環器系や筋代謝系にとどまらず、脳活動や認知機能の低下などを引き起こし、運動パフォーマンスを大幅に低下させてしまうと考えられます。
もっと詳しく
人間は運動によって筋活動によって大量の熱が産み出されます。これを「熱生産」と言います。人間の運動において、運動に用いられるエネルギーは僅か20%程度しかなく、残りの80%は熱に変換されてしまいます。人間の体温上昇の仕組みは、この運動によって生まれた熱が血液循環によって全身に運ばれ、全身の体温が上昇するという仕組みになっています。
体温上昇によるパフォーマンスの低下を防ぐ方法は、単純に運動前に身体冷却することで、危機的限界レベルの深部体温40℃までの貯熱量を大きくすることだとか考えれます。この方法は「プレクーリング」と言われます。
プレクーリングには氷やシャワーなどで身体を外部から冷却する「身体外部冷却」と冷えた飲料などを摂取し、身体を内部から冷却する「身体内部冷却」があります。
身体冷却のおすすめ方法
最後に身体内部冷却と身体外部冷却の2種類について、最も効果があると言われている方法やそな効果などを解説します。
身体外部冷却のおすすめ方法
身体外部冷却では、冷水浴がパフォーマンスを向上させるという報告が多く寄せられています。水温25℃で約30分程度の冷水浴は、運動前の体温を約1℃程度低下させることができ、心拍数や発汗量を軽減するため持久性運動能力を向上させます。
身体外部冷却は、高強度で短時間の運動よりも持久性の運動に有効性が高いと言われています。
試合中や試合前に行う場合はアイスパックなどを使うのが効果的でしょう。
身体外部冷却の注意点としては、外部からの冷却となるため冷却Vの筋温の低下によるパフォーマンスの低下には注意が必要です。
身体内部冷却のおすすめ方法
身体外部冷却でおすすめした冷水浴は、実際に試合前や試合中に実践することはほぼ環境的に不可能であると考えられます。そこで身体外部かの冷却に対し身体内部からの冷却方法として注目されているものが、「アイススラリー飲料です」これは液体に微細な氷の粒が混ざったもので、氷が融解し水に変わる際に熱を大きく吸収するのに加え、氷自体の冷却効果も加わるため効率的に身体冷却を行うことができます。
体重70㎏の人が水温4℃の冷水を525㎖摂取した場合、深部体温が約0.29℃低下するのに対し、同僚のアイススラリーを摂取した場合は深部体温は約1.07℃低下と、約3倍の冷却効果があると報告されています。
参考文献
鬼塚 純玲(2018)『身体冷却による運動能力向上に関わる中枢性機序』
https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/ja/list/HU_journals/AA12198647/13/--/item/47108
刑部 純平(2020)『新たな冷却戦略の実践深部体温の上昇を抑える』
https://www.nsca-japan.or.jp/journal/27_5_13-19.pdf
参考書籍
征矢英照・山本貢(2017)『もっとなっとく 使えるスポーツサイエンス』
【スポーツ】我慢は時に、パフォーマンスを下げてしまうかもしれません。
何かの目標を達成するためには、何かを我慢しなければなりません。
これはスポーツにおいても同じだと考えられます。
理想に肉体を手に入れるため、高いパフォーマンスを発揮するため、目的は人それぞれですが、大きな結果を得るためには「我慢」がつきものです。
しかしその「我慢」は、続けすぎると逆にあなたのパフォーマンスを下げてしまうかもしれません。
今回は、その「我慢」についてフロリダ州立大学の社会心理学部の教授であるロイ・バウマイスター氏らが行った実験をご紹介します。
実験内容
空腹の学生を被験者として集め、2つのグループに分けます。2つのグループを甘いクッキーの香りが漂う部屋に入ってもらい以下の行為を行ってもらいます。
グループA
部屋の中にある、チョコレートとラディッシュ(二十日大根)が置かれたテーブルの中から、チョコレートを3個食べてよいと伝える。
つまり、誘惑に逆らわず食べたいものを食べることができる。
グループB
部屋の中にある、チョコレートとラディッシュが置かれたテーブルの中から、ラディッシュを3個食べるように伝える。
つまり、チョコレートを食べたいという誘惑に逆らい、ラディッシュを食べることで被験者に我慢をさせる。
上記の行動をとってもらった後、2つのグループを別の部屋に移動させ、あらかじめ解くことができないように設定しておいた図形パズルに挑戦してもらい、ギブアップするまでの時間を計測しました。
実験結果
チョコレートを食べることができたグループAは、平均して約20分間パズルに取り組むことができたそうです。
対して、チョコレートを我慢してラディッシュを食べたグループBはものの平均して約8分でギブアップしてしまいました。また、その後のアンケートで強い疲労感も見られたそうです。
考察
今回の実験結果から、我慢を続けすぎると逆に我慢することが難しくなっていくと考えられます。
私たちは常に「意志力(ウィルパワー)」を使いながら生活しています。この意志力は体力と同じく限界があり、物事を我慢したり、物事の選択や発言など日常のいたるところで意志力は消耗していきます。
意志力が消耗すると、思考能力が弱まり、誘惑に負けやすくなったり、判断を誤ったりするようになります。今回の実験でも、チョコレートを我慢するという行為は意志力をかなり消耗させるため、その後のパズルに長い時間取り組むことができなかったと考えられます。
意志力は睡眠によって回復しますが使いすぎると回復しきらないこともあります。つまり、自分にストイックに我慢を続けすぎていると、意志力の消耗が早くなり、睡眠のみでは回復が間に合わなく、逆に誘惑に弱くなってしまうということが言えるでしょう。
意志力を維持するには
では最後に、今回のテーマとなった「意志力(ウィルパワー)」を素早く回復させる方法や、長い時間持続させる方法をすこしご紹介します。
1. 十分な睡眠をとる
これは考察でも書きましたが、意志力を回復させる一番の方法は睡眠です。回復に必要な時間は人によって異なりますが、睡眠には「何時間寝たか」よりも「何時に寝たか」が重要だと言われています。22時から深夜2時までは、成長ホルモンが盛んに分泌されます。成長ホルモンは年齢に関係なく分泌され、脳の疲労回復や壊れた神経細胞を修復するため、ウィルパワーを回復させることに有効だた考えられます。
2. 12時間に一度、適度にブドウ糖を摂取する
これもよく聞く話だと思われますが、脳を動かす6種の栄養素、ブドウ糖、脂肪酸、リン酸、アミノ酸、ビタミン、ミネラルのうち、脳を動かすエネルギー源として活用できる栄養素はブドウ糖しかないと言われています。今回紹介した実験においても、チョコレートを食べたことが結果が大きく分かれた一つの要素なのかもしれません。
脳は毎時5グラムのブドウ糖を消費すると言われています。それに対し肝臓に備蓄できるグリコーゲンは60グラムが限界と言われており、最長でも12時間程度しか脳にブドウ糖を供給することができないと考えられます。
3. 目に疲労を蓄積しない
「目は心の鏡」と言われているように、目の動きにはその人の思考や心理状態が現れます。脳と器官が脳神経によって直結されている器官は目のみです。脳が処理している情報のうち8割は視覚を通じて処理されていると言われています。スポーツにおいて、特に球技では目が命です。目の疲労は蓄積すればするほど集中を妨げ、ウィルパワーの消耗が激しくなると言われています。マッサージなど目のケアを心がけることが、ウィルパワーの消費を軽減すると考えられます。
今回の参考書籍
池田貴将(2017)『図解モチベーション大百科』
メンタリストDaiGo(2016)『自分を操る超集中力』
今回の参考サイト
リクナビNEXTジャーナル「意志力を、鍛えよ!今気になるビジネス書の要約」
【スポーツ】火事場の馬鹿力は存在します。
火事場の馬鹿力とは
「火事場の馬鹿力」とは、火事現場などの命の危機的状況に陥った時に、普段は発揮することができない爆発的な力を発揮する。という話からできた慣用句です。
スポーツにおいても、もしこのような爆発的な力を発揮できれば、パフォーマンスは大きく飛躍するでしょう。
火事場の馬鹿力発揮される仕組み
火事場の馬鹿力は人間の生理的反応のひとつで、生命の危機的状況により、視床下部という脳の間脳にある自立機能の調整を行う総合中核が活性化することによって起こります。
視床下部が活性化すると、緊急対応として強いストレスが生じ、覚醒度、心拍数、血糖値などが高まり、爆発的な力を発揮します。
しかし、火事場の馬鹿力は自分の意思で発揮することができません。
これは、人が意識的に発揮できる最大筋力は通常、筋肉や骨、靭帯などの損傷を防ぐため、筋肉を支配する運動神経である「α-運動ニューロン」の興奮が、「抑制制介在ニューロン」によって抑制されているためです。
ですが、火事場の馬鹿力が発揮されるときはそれに限りません。これは、馬鹿力の発揮時にはα-運動ニューロンにかかる抑制が取れるためです。
もっと詳しく
火事場の馬鹿力は脳の覚醒度に大きく関係があると言われています。通常の運動の場合、運動意欲の高まりによって生命維持に必要な呼吸等の調整などを行う「脳幹」が活性化します。そうするとその刺激は、骨格筋に随意運動の命令を出す脳の「運動野」といわれる領野を介して脊髄へと伝わり、α-運動ニューロンを興奮させます。
一方で、火事場の馬鹿力の場合、「オレキシン」という脳の覚醒状態を維持するホルモンが分泌され一気に覚醒度が高まり、そこから脊髄に直接投射することができる「モノアミン神経」という神経が、α-運動ニューロンに直接作用されるため、通常の運動よりも少ない中枢からの入力でも、大きな力の発揮が可能になると考えられています。
火事場の馬鹿力を発揮する方法
では最後に、火事場の馬鹿力を発揮する方法をご紹介します。
1.規則正しい生活を心がける。
上記で説明した、「オレキシン」は眠気に関与する「メラトニン」というホルモンと相反するホルモンです。この2つのホルモンは体内時計と、主に日光や電気などの環境光によって調節されると言われており、生活リズムを乱し夜遅くまで起きていたりすると、これらのホルモンの分泌リズムが崩れ、通常であれば日中に分泌されるはずの「オレキシン」の分泌が少なくなってしまうなどの現象が起こります。
こうなると、本来出せたはずのハイパフォーマンスも出す事ができません。
日ごろから、規則正しい生活をすることで、重要な場面で高いパフォーマンスを発揮できると考えられます。
2.大声を出す
この大声を出すという行為には中枢による抑制を減らす働きがあります。この行為を「シャウト」と言います。
実際の研究で、パワー系のスポーツにおいて、何も声を発さない場合に比べ、シャウトを行った場合は筋パワーが約15%ほど増大したという報告がされています。
少しでも中枢による抑制を減らし、火事場の馬鹿力に近い筋力を発揮するには、大声を出すとよいと考えられます。
3.自己暗示をかける
自分がベストパフォーマンスできているポジティブなイメージを連想したり。「私なら絶対できる」「絶対に勝つ」などといった言葉を自分自身に言い聞かせることや、周りの人やチームメイトに試合に対する決意を宣言することで、自らを興奮状態にします。
そうすることで上記で説明した脳の覚醒度が高まり高いパフォーマンスの発揮につながると考えられます。
今回の参考書籍
征矢英昭・山本貢(2017)『もっとなっとく 使えるスポーツサイエンス』
今回の参考文献
柳川和優・磨井祥夫(2019)『 シャウトによる筋力増強効果』
https://core.ac.uk/download/pdf/227204031.pdf
今回の参考サイト
https://kotobank.jp/word/%E9%81%8B%E5%8B%95%E9%87%8E-35707
SankeiBiz『睡眠の質を向上するには?』
https://www.sankeibiz.jp/business/news/210402/prl2104021703161-n1.htm
快眠ジャパン『オレキシン受容体拮抗薬』
【スポーツ】トレーニングにおいてゴールを高く設定すると、パフォーマンスも高まります。
どんなトレーニングをするにも必ず「回数」をこなします。
皆さんはこの「回数」について、どのような捉え方をしていますか。
自主的にトレーニングをするとき、どのような方法で「回数」を決めていますか。
また、スポーツ団体や部活動に所属しているとたまに、
本当に意味があるのかと疑いたくなるようなただただきついトレーニングメニューを
何セットもやらされた経験はありませんか。
今回はそのトレーニングについての「回数」や「セット数」について、
書籍『図解モチベーション大百科』におすすめしたい研究内容ががあったので
ご紹介します。
この実験は「カチッサー効果」で有名な社会心理学者エレン・ランガー氏が行った、
ゴールと持久力の関係についてを調べた実験です。
実験内容
被験者を2つのグループに分け、それぞれに以下のような質問をして
その回答を記録します。
グループA
「ジャンピングジャック(両手足を開いたり閉じたりしながら跳ぶエクササイズ)を
50回行うとしたら何回目くらいに疲れると思いますか?」と質問する。
グループB
「ジャンピングジャックを70回行うとしたら、何回目くらいで疲れると思いますか?」
と質問する。
以上の質問をして回答を記録する。
実験結果
グループAの回答は、ほとんどの人が「大体30回くらい」と回答しました。
グループBの回答は、ほとんどの人が「大体50回くらい」と回答しました。
考察
実験結果から、人がエクササイズをするときそのエクササイズを
きついと感じ始める回数は目標とする回数(ゴール)の大体3分の2程度の回数から
であると考えられます。
脳は密接に身体と連携しており、意外にも「思い込み」が体に与える影響は大きく、
よく、「2種類の模様が隠れている1枚の絵の一方の模様は見えてももう一方の模様はなかなか見つけられない」といった現象と同じです。
例えば、きついトレーニングメニューが与えられたときに、「与えられた回数あるいはセット数の1.5倍の数をやるものだ。」というように自分で決めると、
きついことに変わりはありませんが、その与えられた回数を目いっぱいこなすことが
できるのではないかと考えられます。
自主練習や筋トレの動揺に、自分でやりたい回数の1.5倍の回数を設定し、
その回数に向かって取り組むと、本来こなしたかった回数をやりきることだできるでしょう。
結論
目標とする回数の1.5倍に設定することで、
パフォーマンスは向上する。
今回の参考書籍
池田貴将(2017)『図解モチベーション大百科』